痛風の痛み(痛風発作)が起こる仕組み
痛風はそもそも体が持つ仕組みから発生しています。
私たちの体は約60兆の細胞でできています。細胞の全てに核があり、核には核酸が含まれます。その核酸を構成する物質の一つがプリン体です。プリン身体は肝臓や腎臓で分解され最終的に尿酸となります、そして尿や便として体外に排出されます。
出典:『痛風・高尿酸血症』(高橋書店、2014年、P.22)
尿酸の生産が過剰になるか、尿酸の排出機能が低下するか、またはその両方の混合で体内の尿酸濃度が上がり血液中の尿酸の濃度が一定より(7.0mg/dl)高くなるとナトリウムと結合し結晶化することが知られています。これが尿酸結晶です。尿酸結晶が関節など体内に徐々に沈着していき、あるとき関節液中に剥がれ落ちます。すると体の中の異物と見なされ白血球がこれを除去しようとするのです。その工程でサイトカイン、活性酸素など生理活性物質を生成され、それが毛細血管を広げ血流を激しくすることで強い痛みや赤みを帯びた腫れを引き起こすというのが痛風発作が起きる仕組みです。
足の親指の付け根が7割
痛風の症状の約7割が親指の付け根に現れます。親指の付け根も含め、最初の痛風の症状の9割は下半身に現れます。痛風はタンパク質が少ないところ、温度が低いところ、運動などで負荷が多くかかるところなどに症状が出やすい傾向があります。足の親指は体の末端であり温度も低く、体重を支えるため負荷がかかりやすく、且つ他の足の指より太いため尿酸の結晶が貯まりやすいので症状がもっとも出やすい部位となっているんですね。
その他、症状が出やすい場所としては足の甲、足の指の付け根、くるぶし、かかと、アキレス腱、膝、ひじ、手首、手指の関節などが挙げられます。多くの場合、最初の痛風の発作は身体の一か所に現れるので、複数個所が痛む場合は他の病気の可能性が高くなります。
激痛!痛風の痛さとは?
痛風の名前の由来は諸説ありますが、「風が当たっただけでも痛いから痛風」と広く認知されているようです。実際は痛みが風のように体の各部位を移り変わり、また風が吹いたり止んだりるように痛みが強く現れてはピタッと治まったりすることから痛風と名づけられたようです。しかしその痛みは尋常ではなく、「風が当たっただけでも痛い」から痛風というほうが広く認知されたのもうなづけます。ただ痛風と言っても症状に個人差があり、ひどい人はあまりの痛みになにもできなくなってしまうほどですが、少し痛む程度で何かの関節痛かな?とぐらいしか思わないケースもあるようです。
前兆は無く(痛風の発作に何度も経験した人は、ピリピリとした前兆が分かるようになることもあるらしい)、多くは就寝中の深夜か朝方にかけて突然激しい痛みに襲われます。患部には赤みを帯びた大きな腫れを伴い、発作から24時間ほどでピークを迎え、その痛みが3日ほど続きます。そして10日ほどするとすっかり痛みがなくなってしまいます。
痛みが収まっても痛風が治ったわけではなく、多くの場合半年から1年以内にまた同じ症状に襲われます。そして何も治療をしなければ、徐々に発作の感覚が短くなっていき、慢性的な痛風となってしまいます。
<痛風発作体験談>
仕事で肉体労働をした際に関節に大きな負担がかかってしまい、翌日に今までにない痛みを感じるようになりました。足は明らかに赤くはれており、熱を持っている状態でした。歩くことやたちすわりの際にも激痛がはしるので仕事も休むしかなくなり、助けをもとめて病院を受診することとなりました。
『ゴン太さん 30代男性』
似ているけれど痛風じゃない病気
偽痛風
ピロリン酸カルシウムが軟骨に貯まることで発症。痛風ほど痛みは激しくないが痛みが継続して現れる。主に膝など、股関節より上に症状が出やすい。60歳以上の男女に多くみられる。
関節リウマチ
左右対称の関節や複数箇所が痛む。手の指など小さな関節などに現れやすい。痛風ほど赤く大きくは腫れない。急にではなくじわじわと痛みが強くなる。安静時には痛みがないが、患部を動かしたり圧力を加えると痛む。
回帰性リウマチ
関節リウマチと痛み方や箇所は似ているが、数日で痛みが消え一定期間経つとまた痛みが現れるという点でより痛風に似た症状。
変形性関節症
関節の軟骨がすり減ることによって起こる。高齢者の女性に多く見られ、痛風と違い幹部が赤く腫れることはない。痛風と違い時間経過によって自然に症状が治まることは無い。
外反母趾
大きく足の親指が小指側を向いている。変形が治らない限り痛みが取れることはない。
蜂窩織炎
傷口から菌が入ることによって化膿し炎症を起こす。広い範囲が赤く固く腫れ、痛みも伴うという点で痛風に似ている。
痛風発作の応急処置
もし痛風の症状が出てしまったときは、できるだけ早く病院に行きましょう。しかし深夜であったり、なにか病院に行けない状況のときに、自宅でできる痛風の応急処置を紹介します。
触らない
患部をマッサージして痛みが取れるということはありません(おそらく痛みで触ることはとてもできないと思います)。圧力的な刺激は与えないように、とにかく安静にしておきましょう。
冷やす
炎症が起きているので冷やすことが効果的な対処法です。冷やし方は濡らしたタオルや氷嚢、保冷材を患部に当てます。冷湿布を使うのもよいでしょう。タオルや氷嚢を当てることもことも痛い場合は、バケツや桶に水を張って足を浸してもよいです。冷やし過ぎには注意!
患部を高い位置に
足に発作が起きたら、仰向けになり足の下に座布団やクッションを敷いて体より高く保ちましょう。心臓より高くすることで血流が改善し、多少痛みを和らげることができます。
水分をとる
尿の排泄を促して、尿酸の排出量を増やします。
これは応急処置にとどまらず、長期的な痛風の治療にも繋がってきます。ジュースやコーヒーではなくお茶や水を1日に2-2.5Lを目安に摂りましょう。
禁酒
アルコールを摂取することで肝臓がそれを分解、その過程で尿酸が作られてしまいます。ですので、一刻も早く痛風の発作を抑えたいならお酒の種類を問わずアルコールの摂取を控えましょう。
ツボマッサージ
主に足のツボをマッサージすることで、腎臓の働きを良くして尿素の排出を促します。
発作が起きているときに患部のそばのツボを押すことは避けましょう。これも日ごろから行うことで痛風の改善につながります。
市販の鎮痛剤を使う
薬局で販売されている鎮痛剤でも一時的に痛風の痛みを和らげることができます。
【ロキソプロフェン系】
ロキソニンS・ロキソプロフェン錠・エキセドリンLOX・・・等
【イブプロフェン系】
イブ・イブA錠・EVEクイック・リングルアイビー・ノーシンピュア・・・等
※尿酸値を上げる作用があるので痛風の発作で飲んではいけない鎮痛剤!
【アスピリン系】
バファリンA・バファリンプレミアム・バファリンルナi・エキセドリンA錠・ケロリン・・・等
参考:メディカルアドバイザー
上記の対処法は痛風の発作や痛みを一時的に和らげるだけのもので、痛風そのものを治療する効果はありませんので必ず病院で診察を受けるようにしてください。尿酸値を下げるなど、根本的な治療を行わないと痛風は再発します。。発作を放置すると徐々に痛風発作が起きる頻度が増え、更に長年放置するとコブ状の痛風結節ができてきます。その他、合併症を発症する恐れもあります。
痛風の根本的な治療
痛風は高尿酸血症を長期間ほったらかしにすることで発症しますので、痛風にならないようにするためには尿酸値を上げないように生活を送る必要があります。尿酸値を上げる大きな要因はアルコール、肥満、ストレスです。これら以外にもありますが、痛風にならないようにするにはまずこれらを改善するのが効果的です。
1.アルコール
アルコールは尿酸値を上昇させる原因になりますが、一滴も飲んではいけないのかというとそうではありません。適正な量であれば高尿酸血症になるリスクも抑えられます。社団法人アルコール健康医学協会では、適量範囲として「2単位ぐらいのお酒を限度とすること」と案内されています。
2.肥満
肥満と痛風(高尿酸血症)との関係についてはまだまだ研究段階ではあるものの、肥満体型の人は過食によるプリン体の取り過ぎや肥満そのものの影響により尿酸値が高い傾向にあることがわかっています。食べ物の種類などはさほど重要ではなく、肥満の解消が痛風治療には重要です。
3.ストレス
ストレスが直接尿酸値に影響があるかはまだ不明な点もあるようですが、ストレスが高まることにより交感神経が働き代謝が活発化、尿酸の生産が増える、排尿機能の低下により尿酸の排出量が減ることなどが理由で、尿酸値に悪影響があるようです。納光弘氏(『痛風はビールを飲みながらでも治る』著者)が自身の精神状態と尿酸値に相関性が見られることを確認しています。そうでなくてもストレスがあっていいことはあまりないですから、できるだけストレスを溜め込まずに過ごしたいですね。
尿酸値を下げる薬を使えばちゃんと尿酸値は下がる
今は尿酸値を下げる薬が開発されて、それを服用すればちゃんと尿酸値を下げられます。実際に自分の尿酸値が高くなっている原因により服用すべき薬は変わってきますし、それを自分で判断することは無理です。まずは病院で診断を受けて、自分の体の状態に合った薬を処方してもらうようにしてください。
尿酸値を下げる薬を飲むと一生飲み続けなくてはいけないと思われがちです。確かに尿酸値を下げる薬は尿酸が高くなる体質そのものを治療するものではありません。体質や生活習慣を変えなければ一生飲み続ける必要があります。しかし、服用して尿酸値を抑えながらその間に、肥満の解消や生活習慣の改善することができれば薬を飲むことをやめることもできるようです。高尿酸血症の状態は非常に危険ですので、お医者さんから勧められたら迷わず服用しましょう。そして薬からの卒業を目指しましょう!
尿酸値を下げる薬
生産抑制型 | 排出促進型 |
・フェブリク(フェブキソスタット) ・ザイロリック(アロプリノール) ・アロシト-ル(アロプリノール) |
・ベネシット錠(プロベネシド) ・ユリノーム(ベンズブロマロン) |
健康診断をうけよう
既に痛風の人はもちろん、痛風の発症を未然に防ぐためにも健康診断を受けましょう。健康診断の種類も複数あり、痛風を調べるためには血液検査による尿酸値のチェックが必要になります。会社に勤めている方は、会社の健康診断が年に1回行われているはずなので、そのときの数値を見てみましょう。尿酸値、もしくは「UA」「Ur」と書かれた項目が7.0mg/dLよりも高い人は要注意です。
参考文献:監修 日高雄二『患者の為の最新医学 痛風・高尿酸血症』(高橋書店、2014年),納光弘『痛風はビールを飲みながらでも治る!』(小学館文庫、2014年),藤森新・泉眞理子・島崎とみ子『痛風の人の食事』(女子栄養大学出版部、2002年)、監修 谷口敦夫『尿酸値が高い人がまず最初に読む本』(主婦と生活社、2014年)